過去の記事でも書きましたが、ぼくがキャンプ好きになったのは、野田知佑さんのエッセイ本「のんびり行こうぜ」と出会ったことがきっかけでした。
アウトドアというと一種の『レジャー』や『趣味』のような風潮がありますが、野田知佑さんのその世界観は、もっと男らしく独特で、川を旅しながら自然の中で人生を送るというものです。
自分が生きる場所を自分で選ぶかっこよさに、強烈に憧れたものでした。
野田知佑さんは無骨で寡黙な男というイメージではありますが、文章がとても面白く、きっとサービス精神旺盛でユーモラスな方だったんでしょう。
当時のアウトドア好きからは絶大なる支持を得ていました。
野田知佑さんの、川に足をつけながら本を読んでいる姿の写真を見て、「あぁ、小説家や物書きのような仕事に就けたら、旅をしながら仕事ができるんだな。」などと夢にみたものでした。
そんな敬愛する野田知佑さんが、今年の3月27日に84歳でお亡くなりになられたそうです。
とても残念です。
「のんびり行こうぜ」が連載されていた雑誌『BE-PAL』の公式サイトでも、野田知佑さんの訃報を伝える記事が掲載されています。
生前の野田知佑さんの写真を中心に掲載されているので、それだけでも世界観は伝わるはずです。
知らない方は是非『BE-PAL』の公式サイトで、その世界観を感じ取って欲しいです。
そして、野田知佑さんを語る上で欠かせない人物といえば、作家の椎名誠さんではないでしょうか。
野田知佑さんは、椎名誠さんが主催する『怪しい探検隊』にもよく顔を出されていたみたいですし、お互いの作品にもたびたび名前が登場するほどの仲で、ファンからすると黄金の名コンビのような印象があります。
特に『ガク』の存在は、二人の特別な関係性を強調していますね。
お二方とも『世界を旅する作家』でもあるため、シンパシーを感じていたんでしょうね。
馴れ合いなどは嫌いで、ぶっきらぼうな雰囲気すらあるお二方なので、水と油のようにも思えるのですが、それでも「仲良しでいて欲しい」と思わせる関係性です。
事実、ある時期では不仲というか、大げんかした時期もあったそうですが、噂のレベル(お互いの作品でも匂わせています。)なのでことの真相なんてわかりません。
ファンとしては、それでも「仲良しでいて欲しい」と、思っていただけです。
そんな椎名誠さんも、野田知佑さんを偲んだ記事を文藝春秋へ寄せています。
『文藝春秋』6月特別号(文藝春秋)の「巻頭随筆」に椎名の「フーテンのシェーン」が掲載されています。今年3月にお亡くなりになった野田知佑さんのことを書いています。 https://t.co/9OCKSKFf7M
— 椎名誠 旅する文学館 (@shiina_tabi) May 10, 2022
文藝春秋digital版の「フーテンのシェーン」はコチラです。
読んでみると、やはりお二人の特別な間柄を感じられる内容でした。
野田知佑さんへの最後の言葉とも捉えられる本編で、役人を川へ投げ込んだエピソードを紹介するあたりも、胸に迫るものがありました。
だれもが知るエピソードを交えつつ、本当に近しい人だけが見ることができる野田知佑さんの素顔について語られています。
特に最後の、一枝夫人と野田知佑さんとのやりとりは、まるで目の前でその光景を見ているかのように錯覚してしまいました。
寅さんやシェーンと例えられ、少し嬉しそうにされた野田知佑さんのお人柄が伝わってきます。
過去に椎名誠さんとはお会いする機会がありましたが、結局野田知佑さんとは一度もお会いすることができませんでした。
どうにか無理矢理にでも会いに行けば良かったなと後悔が続いています。
息子も3歳になり、野田知佑さんが校長をされていた徳島県吉野川の『川の学校』にも連れて行ってあげたいと願うこの頃です。
僕の住む地域では、神社に安産祈願の石を奉納する風習があるんですが、息子のお宮参りの際に奉納した石は吉野川の石でもありました。
野田知佑さんのことは本で聞かせてあげることしかできませんが、これから先の世代にも伝わって行けたらいいなと思っています。
心からご冥福をお祈りいたします。